485特急色を鳩原ループ俯瞰でキメたい!!

2009,9/10

 10年くらい前だったか、なんかの雑誌で北陸線の鳩原俯瞰からの撮影でボンネット同士が交錯している素晴らしい写真を見たことがあった。それはもう絶妙なタイミングで、技術はもちろん天気、タイミングの運にも拠るところだが、ボンネットはこの区間の定期から撤退してしまったが、485狙いでいつかこのお立ち台を訪れたいとは思っていた。聞けば10月より「雷鳥」の運用は削減され、全列車パノラマ車で統一されると言う。ということは大阪方のオリジナル先頭車が消滅するわけで、上りを狙う鳩原俯瞰は是非今月中に行かねばならないポイントの一つだった。

 早朝からの仕事が長引き、バイクで横浜を発ったのは日付が変わる少し前だった。すでに出発時から眠さの限界を超えており、現地到達も危ういのも出発前から分かっていた。出発する時はあんなに暖かだったのに、大井松田からの山越えに入るとパーカーにジャケットでは寒さを防ぎきれないほど。自分としたことが甘かった。静岡を過ぎて牧の原SAで休憩。ここには横になれる仮眠室があるので1時間ほど寝ていこうと時刻表を枕に目を閉じた瞬間に爆睡。寒さと眠気でもう1kmも前に進めない状態になっていた。
「戦意喪失。撤退せよ!!」
当然こうなることは分かっていたが、目が覚めると9時を過ぎており、THE END。朝飯を食ってから次の相良牧の原ICで高速を降り、国道1号を東に走り箱根を越えて横浜に帰ってきた。



2009,9/17

 今日も福井県は晴れの予報。前回と同じく早朝からの仕事後なので、バイクよりは楽な車を選択。車なら仮眠もしやすいし幾分バイクよりも巡航速度も速いので迷わず4輪を選んだ。今日は、今年4月に訪れた、朝陽で琵琶湖の湖面がキラキラに輝く志賀〜蓬莱を第二の目的地として向かった。あの時は最悪なことに通過直前急な生理現象の変化により最も逆光の美しい4号を外したので、夏至を挟んで4月と同じ光線状態と思われる9月の今日をそのリベンジとした。4号を撮った後も、飛ばせばギリギリで非パノ先頭の12号を鳩原俯瞰で迎え撃つことができる。途中2回ほど仮眠して京都東ICに到着。湖西道路で半年前と同じ場所に立った。オオッ、コレは!! 太陽もバッチリ湖水を反射させていて築堤がシルエットになっている。計算通〜り!! やがて定刻どおりに雷鳥がやってきた。高速で突っ走る区間をほぼ真横から狙うので一瞬の勝負になる。瞬きもしないようファインダーを凝視し、485のモーター音が徐々に高鳴って視界に飛び込んできたのは、なんとパノラマ車であった。あれ!? 編成の差し替えか? 不意打ちをくらったため先頭はシャッターを押せなかった。我に返り最後尾を狙うことにした。精神を集中させて1両、2両、3両・・・とファインダーの中を通り過ぎる車両を数え、9両目でレリーズを深く押し込んだ。



そうそう、こんな画が欲しかった。後追いの4号最後尾。
2009,9/17   湖西線  志賀〜蓬莱  EOS5D  100-400mm

 プレビューを確認する間もなくすぐに発進。疋田へと急いだ。目的地までの距離と時間にハラハラしながら、12号通過15分前に鳩原到着。天気は雲一つない快晴。絶対にモノにしてやる。目指すお立ち台は遥か上空に聳え立つ高圧鉄塔の足場。初めての場所だったのでアプローチ方法が分からなかったが、地形図でおおよその見当をつけておいた林道のような幅員の狭い行き止まり道。これが恐らく鉄塔への管理通路になっているのだろう。意を決して車でその道を分け入ると本当に狭い! 車両での進入は不可能と判断して車を駐車できるところまで戻ろうと切り返しを何度もやっているうちに時間切れ。軽やかなジョイント音だけを残して雷鳥は行ってしまった。もう手の届くところまで来ていたのに何ということ! この後は下り雷鳥でも撮っておこうかと計画していたが、あまりのショックに落ち込むことしばし。琵琶湖逆光だけでも頂けたことを慰めにして今日も哀れ帰ることにした。





2009,9/24

 さて、シルバーウィークも最終日、いつものように深夜の東名高速を西下した。前回の教訓から今回はバイクである。最近、深夜の高速移動では、眠さの限界まで運転を続け、身の危険を感じたら即ピットインして2時間仮眠というパターンが、結果的に最も効率よく移動距離を稼げることが分かってきた。今日は目的地直前の岐阜県養老SAまで来ることができた。午前3時だった。屋外の簡易なテントのあるベンチでアラームを5時にセットしてわずかな眠りに就いた。

5時起床。気温は20度ほどあると思われるが、屋外で寝ていたせいかマヂ寒い。缶コーヒーを買おうと自販機の「あたたか〜い」と書いてあるボタンを押すと普通に冷たいヤツが出てきて騙された気分になったあと、出発。1時間ほど走って敦賀ICで降りる。高速に乗ったのが連休の最終日の夜だったため料金は¥1200。かなり感動。現地に直行する前に、一旦落ち着いて今日の獲物のダイヤを確認すべく新疋田駅に立ち寄った。カロリーメイトとおにぎりで朝食を取りながら作戦タイムを取っていると、パーイチの貨物がやって来た。それを見物しているうちに時間になったのでそろそろ参ろうか、鳩原俯瞰! 国道を少し敦賀方へ走り交差点を左折。林道を行くことしばし。今日は二輪なのでグングン進める。車道が途切れたところから竹林の中を登山道が延びている。バイクを停め撮影機材を一式担ぎ、九十九折のない急斜面の直坂を登ること10分。鉄塔のたもとに到着。眼下にはループに駆け上がるべく高度を稼ぐ上り線路が一望できる。素晴らしいではないか、鳩原ループ俯瞰!! 先客は1名。挨拶を交わし三脚をセットしているとさらに2名が登頂してきた。あと20分ほどで本日1本目の非パノラマ先頭の「雷鳥4号」がやって来る。天気は快晴だが大気の透明度はまずまず。カスタムファンクションでコントラストをやや高めにして485を待っていると、誰かの発言に耳を疑った。「北陸線上り止ってるって・・」。最初は信じられなかったが、携帯で交通情報を検索していると「芦原温泉〜丸岡間で架線切断のため北陸線上りが運休中」とのこと。まさか、ここまで来てウヤだなんて・・しかも狙っている上りのみが止まっているとは何と運の悪いことか。発生が6時頃とある。「オレ」の雷鳥4号は芦原温泉6時49分発なので、架線が垂れ下がった事故現場の直前で足止めを喰らっているということになる。あと1時間発生が遅ければ事故現場を通過でき大阪まで無事にたどり着くことができたのに・・。かわいそうな雷鳥タン・・・。架線切断であれば復旧は2時間以上か。すでにこの時点で山腹にいる全員が長期戦を覚悟していた。

8時時点。眼下を行く普通列車は上下共に定時に運行しているようだ。下り特急は朝の2本が行ったきり遅れているのかウヤなのか、パッタリ来なくなってしまった。すでに事故発生から2時間。このままでは出発している列車は途中打ち切りか、出発前なら運休など最悪の事態も想定されたが、反面、通常なら早い時間の通過では影になってしまうカーブ奥にも遅れれば遅れるほど陽が当たり、、通常ではありえないライティングで頂くことができる。来ればの話だがここは関西〜北陸を結ぶ大幹線。折返しの車両も不足するので急ピッチで復旧工事をしているものと期待する。ただ車両差し替えは無くも無いことなので、遅れてでも非パノの雷鳥4号、12号、そして日本海は来ていただかないと困る。やがて8時半ころ。ついに復旧との知らせが来た。しかし何本かの特急が運休になっているのは事実。期待していると動き出したサンダーバードたちが続々とやって来た。いったい何本の特急が抑止されていたんだろう。雷鳥は!? 幸いな事に麓の列車接近警報がここまで聞こえてくるので、「プープー」という音が聞こえたらカメラに飛びつき、それまでは昼寝するという行為を繰り返しながら国鉄色485系を待った。どれくらいの681を見送っただろう。やがて伝統の国鉄特急色が下界に現れた。およそ2時間半の遅れだった。というよりこれは本当に雷鳥4号なのか。次の雷鳥12号の通過時間もとうに過ぎていた。

乱れに乱れた北陸本線。美しい躯体を従えループへと駆け上がる雷鳥4号(?)
2009,9/24   北陸本線  敦賀〜新疋田  EOS5D  24-105mm


 やっと来てくれたと安堵している間もなく、485が通過すると全員三脚のカメラを外し、すぐに尾根の先端に移動。ここからはループを270度回り込んで標高を稼いだ今の通過列車が、敦賀湾をバックにトンネルから顔を出す一瞬を捉えることができる。ループを回るのに約1分。時間も無いので全員手持ちで遥か彼方を狙った。



後ろは敦賀市街。ちょうど北海道行きのフェリーが出航したところだった。
2009,9/24   北陸本線  敦賀〜新疋田  EOS5D  24-105mm

 ひとまずイメージ通りの画が作れて安堵した。これでヨンパー来ませんでしただったら目も当てられない。次は順番でいえば寝台特急「日本海」だ。落ち着こう落ち着こう。こういう時は取り乱してはいけない。着実に今すべきことを実行する。後の山に駆け上れば今行った4号の後追いもできるのだが、平常心を忘れることなかれ。次の仕事は「日本海」だ。




と思ったら485だった。12号だろうか?恐らく昼行スジを優先させて「日本海」を退避させた模様。
2009,9/24   北陸本線  敦賀〜新疋田  EOS5D  24-105mm




同じポイントから背後を望む。
2009,9/24   北陸本線  敦賀〜新疋田  EOS5D  100-400mm


 その後681が5分間隔ほどで立て続けに4本通過。そして、ついに81に牽かれた碧い客車が姿を見せた。やがて今日の大トリとなる寝台特急「日本海」がループへのアプローチに足を踏み入れた。



3時間遅れで来くれたおかげでド順光の鳩原ループで頂戴できた。美味。
2009,9/24   北陸本線  敦賀〜新疋田  EOS5D  24-105mm


 これにて本日の国鉄色祭りは終了。結果この山腹には5時間ほどいたが、なかなかの成果を得られて満足だった。皆それぞれヤマを降りる。麓に置いたバイクと久しぶりの再会をし、夕方まで別のポイントで撮影をするつもりだったが、今日はこれにて引き上げることにした。次第に姿を消してゆく485系雷鳥。完全消滅はまだ先のことかもしれないが、紅葉、桜、厳冬期、様々な四季の中を走る485の姿をできるだけ記録に残していこう。再訪は近いうちに必ず果たす。



オマケ。サンダバ同士によるオーバークロス。
2009,9/24   北陸本線  敦賀〜新疋田  EOS5D  100-400mm